国葬に伴う交通規制によるお荷物のお届けについて
JOURNAL
YLÈVE MEN'S COLLECTION | 2022 SPRING & SUMMER

YLÈVE MEN'S COLLECTION | 2022 SPRING & SUMMER

2022.02.18

YLÈVE MEN'S COLLECTION | 2022 SPRING & SUMMER
セオリーを宿した、余白のある顔づくり

YLÈVE MEN'S COLLECTION
2022 SPRING & SUMMER
セオリーを宿した、余白のある顔づくり

素材へのこだわり、シルエットへの追求、仕立てへの心配り。
服の基本を大切にしながら、そのすべてを「今」に紡いでみせる「YLÈVE」に、
2022年春夏シーズンから新たにメンズコレクションが加わります。
予てからその待望論がささやかれていた中でのローンチを前に、
デザイナーの田口令子さんは何を期するのでしょうか。
ウェブメディアAnglobal Community Mart
取材を通してその心境に迫りました。

Interview & text by Soya Oikawa (TSI)


—まずはなぜ、メンズコレクションをつくることになったのかを教えてください。

田口 きっかけは展示会に来てくださったお客様の声からです。男性のバイヤーさんや一緒に来られた関係者の方から「こういうのでメンズがあったらいいな」というお声をいただくことがしばしばあって。はじめは「そういうものなのかな……」くらいに思っていたんですけど、私がYLÈVEの服を着ていると「その服のメンズはあるの?」とか「メンズはやっているの?」としばしば聞かれたり、メンズ用に別注をいただく機会もでてきたので、じゃあ本格的にメンズのコレクションをやってみようかと。

—展示会でコレクションを見たバイヤーさんが「これはメンズにも刺さりそうだな」っていう期待をYLÈVEのデザインの中に感じたってことですよね。その意味では何か察するようなところはあったのでしょうか。

田口 もともとYLÈVEはゆったりとしたシルエットなので、メンズのサイズ感としてもあまり違和感がなかったのだと思います。デザインもベーシックで、ユニセックスのようなものもあるし、あとはカラーかな。くすみ系とか、レッドなのかブラウンなのか、ブルーなのかグレーなのかみたいなあいまいなニュアンスカラーが多くて、男性からすると「あまりメンズには見られないような色合いだね」というお話は聞いたりしました。デザイン的に違和感がなく、ゆったりとしたサイジング、素材もきちんとしていて、ちょっとありそうでない色合い。そういうのが相まってメンズにも向いているって思われたのかな。

—過去にも部分的にメンズライクなデザインというのはあったと思いますが、本格的なコレクションとしては、ウィメンズとの違いはどんなところにありますか。

田口 これまでウィメンズの服を見てもらってきた中からの「メンズコレクション」という展開なので、基本的にはウィメンズの企画と同じようなデザインがメンズサイズである、という感じになっているのだけど、パターンが違うっていうのはありますね。

—ウィメンズ向けにゆとりや余白感のあるサイジングで作ってきて、基本的にはメンズにも同じような意識でパターンカッティングしている。

田口 はい、そうです。

—YLÈVEのものづくりに通底する「余白」「天然素材」「トラディショナル」というキーワードはそのままメンズにも言えるのでしょうか。

田口 基本的には同じですね。もし変わるとすれば、それは「今の気分としてこれがいい」みたいな意識的なところで「ずらす」ことはあっても、メンズだからってことは無いかな。

—展示会用の資料の中に「1990’s」という記述が出てきます。素材やデザインに関する説明の中に唯一出てくる年代表記ですが、どんな雰囲気をイメージしているのでしょう。

田口 ゆったりとリラックスしたシルエット感です。正確には1980年代の後半からなんですけど、特にジャケットやシャツのテーラリングのことを指していて、その頃のゆったりしたシルエット感やサイジング、ボトムにインしたシャツのブラウジングの具合だったり。それから素材の傾向としてピーチというか、微起毛で少し柔らかい、しなやかな風合いのような、当時のメンズのコレクションブランドにあった雰囲気が気になっているっていう感じですね。

—テーラリングの雰囲気をイメージした「1990’s」ということなんですね。

田口 作りたいメンズのイメージをテーラリングの方に落としていくと、そうですね。当時は「芯や肩パットはカチッとしつつ、ソフトな生地で仕立てるジャケット」みたいな感じだったけど、それをあえて今、私だったらTシャツとか、古着のスウェットにスニーカーを合わせるようなカジュアルな感じで着たいなと思って作っているので、ビジネススーツというわけではなくて、あくまでも今のムードで、デイリーに着る服としての提案ですね。

—では少しずつデザインやディテールのお話も。「毛芯」や「マーベルト」といったクラシカルな仕立てが用いられていますが、メンズとしてのコレクションならではだと思いますか。

田口 YLÈVEは「テーラリング」「ベーシック」「シーズンアイテム」「ミリタリー・ワーク」という4つの軸で服作りをしていて、その中で「毛芯」とか「マーベルト」というのはテーラリングの手法にあるものです。なのでメンズコレクションだからということではなくて、それらはブランドが始まった当初から、メンズ仕様の背景のものづくりをするウィメンズブランドとして、もともと備えていたものなんです。

ウィメンズブランドとしては、私たちのスタンスは珍しいのかもしれないけど、YLÈVEはずっとそうしてやってきて、特にテーラードジャケットに関しては、メンズのパターンナーさんに頼んでメンズのテーラードジャケットの工場で毛芯をすえて作っています。

—女性用のテーラードジャケットを男性用の工場で?

田口 はい。比較的、女性は強いマニッシュなデザインのジャケットを好む傾向があるんですけど、でもそれはデザインであって、構造的でオーセンティックなテーラードジャケットとは違う。私が作りたいのはそういう背景のあるものの方なんです。だからメンズの仕様で作られたYLÈVEのジャケットを見ると女性は「やさしいね」って言うし、男性からは「これはメンズですか」みたいな話になっているのだと笑。

—なるほど。

そこは男女で見る視点の違いによって受け止め方がまったく変わってしまう、いい例なのだけど、メンズのものづくりは定石というか、セオリーみたいなものが結構決まっているので、その中でどうするか。狭義の世界だと思います。

—約束事を守りつつ破る、もしくは破りつつ守る。絶妙なさじ加減が必要そうです。

田口 そうですね。ブランドとしてベーシックでシンプルなものを作っていくなかで、表面上でモードっぽく振るとか、トレンドに寄せていくとか、そういうのはできればあまりしたくないって思いつつ、でも今の気分をどうやって表現するかみたいなバランスがあります。そういう考え方はメンズの世界ならではかもしれませんね。

—コレクションを見渡すと、ボトムスは総じて「ハイウェスト」です。YLÈVEとして全体のシルエットの組み立てという意味で、今の気分によるものなのか、それとももっと根幹的な、コンセプトに紐づくところからなのでしょうか。

田口 そうですね。ブランドを始めた2018年からずっとハイウェストなものを作ってきているから、大きな波のバランス感みたいなところかな。世の中のトレンドとかブームっていうよりは、もっと大きいところの流れのムーブメント的な感じです。

—メンズとしてのファーストコレクションのボトムスの素材に「チノ」と「デニム」を軸に用いた訳を教えてください。

田口 メンズだからっていうことではなくて、基本的に高密度で厚みがあって、ハリ感のある素材が好きなんです。それぞれブランドを始めた18SSシーズンからずっと使っている素材で、デニムはYLÈVEオリジナルのセルビッチデニムなので、ずっとこのオンスです。いわゆる「オーソドックスなデニムは13.5オンス」みたいなところがあって、ここ数年くらいの感じだとちょっと重いかなっていうイメージがあったりするかもしれないんですけど、私たちがやるならそこは標準のところを押さえておきたいなと。

—コレクションの中で唯一の柄、オンブレストライプに込めた期待は。

田口 YLÈVEとしては結構珍しい柄です。ずっとコロナ禍が続いて、そろそろ旅に出たいな、みたいな気分ってみなさんあると思うんですけど、それを服を着ることで体感して欲しくて、異国感のあるオンブレストライプでシャツを作ったり、ウィメンズの方で民族衣装調のペザントブラウスを作ったりしました。いつもの日常の中なんだけど、ちょっとでも気分が変わるようなイメージです。

—具体的にはどの辺の旅を?

田口 ポルトガルとかスペインとかキューバのような、青くて広い空と海と、強い陽射しと、土地の風土にヨーロッパの洗練されたムードが混ざったような感じの場所かな。

—最後に、メンズの服はパターンなどの構造だけでなく、服飾史やトレンドといった意味でもウィメンズとは違った成り立ちをしていると思いますが、田口さんはメンズの服のどんなところがおもしろいですか。

田口 メンズの服にはセオリーというか、ルーツというか、そういう背景を持ったアイテムが結構多くて、狭義な世界のように思うんです。狭いのだけど、私からすると逆に、だからこそ「深さ」というおもしろさがあるなと思っていて。今までもウィメンズでそういうことを意識して作ってきたので、私の中ではそれがそのまま延長するかたちでメンズを作ることに違和感はありませんでした。

—気分や流行といった表層的なものよりも、ベースとなる素材の背景や文化みたいな起点があるような服作りに関心があったのですね。

田口 そうですね。そしてどのアイテムでもいいのだけど、例えばシャツ一枚でも、ブランドらしい「顔」をしたものを作りたい。私たちなりに一通りセオリーには則っていくけれど、それでも襟の立ち具合、ボタンの間隔、ステッチのバランス、肩や袖のボリューム、素材のハリ感とか、そういうことでYLÈVEらしい顔のシャツや、YLÈVEらしい顔のTシャツができてくると思っています。

シャツはシャツに、ジャケットはジャケットに、チノはチノに、デニムはデニムにセオリーが宿り、もちろん女性のためのデザインにもYLÈVEとしてのセオリーが宿っているという一貫性がきっと私たちの一番の強みなので、それは何かひとつのアイテムとかトピックスだけで切り取れるものではなくって、ハイウェストのパンツに関してもYLÈVEらしいパターンの面の作り方があって、YLÈVEらしいパンツになっている。いくつかを並べたときに統一感があって、クオリティの混乱や、「顔」が作れていたりいなかったりっていうこともない。そんな意識のなかで生まれたメンズのコレクション、という感じですね。